転職活動完全ロードマップ【第五章】ホワイト企業分析・ブラック企業分析
【第五章】 ホワイト企業分析・ブラック企業分析
ここまでで全ての準備が整いましたので、いよいよ転職活動の本丸を攻略していきます。現在、あなたは、転職における優先順位(転職の軸)と、転職の基本知識、情報収集ツールを備えています。
ここからすることは主に以下の3つです。
1.応募する企業を決定する
2.書類を作成し、選考に通過する
3.面接を受ける
本章では、「応募する企業を決定する」ために、先ほどの情報収集ツール(主に転職サイト)を使って業界・企業の目利きの練習をしていきます。転職の軸を基に、自分の興味のある業界や企業についてリサーチをしながら、各企業のブラック度合いやホワイト度合いを推測できるようにしていきます。いわば“目を養う”わけです。こういった企業分析を重ねると、一目で地雷企業と優良企業の見分けがつくようになり、転職の成功確率はグンと上がります。さっそく具体的手段をみていきましょう。
第一節 ブラック企業の見極めは命にかかわる
転職失敗の最も多いパターンは、入念な企業分析を怠り、甘い言葉に誘われるままブラック企業に入社してしまう、というものです。ブラック企業への転職は本当にたくさんのものを失いますから、ブラック企業への応募を事前に回避することは転職活動において死活問題となります。
まずは、多くのブラック企業に共通している特徴をみていきます。
これらは企業分析の際に真っ先に確認しておきたい事項といえます。
【ブラック企業の特徴 9選】
1. 薄利多売な事業
薄利多売な事業を展開している企業は、総じてブラック率が高いです。理由は単純で、同じ利益を上げるために必要な労働量が多いから、です。例えば、ラーメン屋さんが1万円の利益を出すために、ラーメンを何杯売らなければならないでしょう?おそらく、20杯以上は売る必要があります。しかもそのためには、材料を買い、仕込みをし、客を呼び込み、接客をし、片付けをする、という一連の長い工程が不可欠です。しかし、同じ1万円を儲けるのでも医者の子ども専属の家庭教師などではどうでしょう?1時間勉強を教えるだけで余裕で達成されてしまいます。その2つを比べた時、必要とされる労働量や時間の差は天と地ほどの差があります。
世の中のビジネスには利益率の高いものと利益率の低いものとがあって、利益率の低いビジネスを展開している企業は基本的にハードワークになります。つまりブラック化し易いのです。さらに付け加えれば、構造的に薄利多売のビジネスはその必要労働量の多さから、人件費が膨らむ傾向が強いため、経営者は日々人件費の削減に迫られています。最少人数で、最低コストで回転率を上げる(鬼労働…)、それが薄利多売ビジネスの宿命なのです。
2. 参入障壁の低さ
参入障壁とは、「その業界への参戦のし易さ」のことです。事業のはじめ易さ、と言ってもよいでしょう。これが低いと、次々とライバルが現れるため、ブラック化しやすくなります。良い例が、美容院・理髪店です。これらは、専門学校での免許と、比較的低額な設備投資で開業できるため、非常に参入障壁が低い業界と言えます。今や美容院と理髪店の数はコンビニの4倍以上!もあるそうです。人は髪を切るペースは変わりませんし、人口は減少傾向にあるわけですから、だんだん減っていくパイを数多くの競争者たちが奪い合っている状況なわけです。そうすると過剰なサービスや超低価格設定など苦肉の戦略に打って出ざるを得ません。そのしわ寄せは誰が引き受けるのでしょう?もちろん従業員です。パイが次第に増えている業界ならまだしも、そうでないのに参入障壁が低い企業はほとんどブラックか、そうでなくともかなりのハードワークを強いられることになります。
3. 熾烈な価格競争
これは1と2の特徴の結果といってもいいかもしれません。価格競争が起きている業界には立ち入らない方が賢明です。牛丼チェーンや学習塾業界、家電量販店、ディスカウントスーパーマーケットなどが分かりやすい例かなと思います。とにかく価格の低さを前面に出している企業や業界はかなりブラックの危険性が高いです。
そもそも価格競争が起きている原因は、商品やサービスのブランド化に失敗している、参入障壁が低く競争相手が多すぎる、長年イノベーションが起きていない、利益率が低い、などが考えられます。この先待っているのは同業界同士の地獄のチキンレースです。価格を下げ続けた結果、企業ごと吹っ飛ぶ可能性も大いにあり得ますから、やはり近づかない方が無難です。
4. 高すぎる3年後離職率
3年後離職率は、非常に重要で正確な指標です。文字通り新卒で入社した社員の3年後の離職率になります。まず大雑把な目安は30%です。これより高ければブラック、もしくは激務の会社である可能性が高まります。また、この3年後離職率は業界によって大きな差があります。例えば、飲食業界、教育業界、ベンチャー企業群などは比較的離職率が高いため、30%を超えることがよくあります。これは個々の企業がブラックであるというより、業界全体のビジネスモデルや慣習に離職を促す何かがあると考えた方が良いです(つまり業界全体がブラック)。また逆に、低い離職率の業界もあります。例えば大手製造業やインフラ業界は、離職率が1ケタです。しかしこれもきちんと同業内で比較をして、同業他社と比べて高いのか低いのかまでしっかり調べておくべきです。もし30%を下回っていても、同業他社と比べて明らかに数字が高い場合は、避ける方が賢明です。3年後離職率は就職四季報に掲載されているため、手に入れやすい情報の割に効果抜群のブラック企業見極めテクニックです。
5. 求人ページに数字がない
各企業は大手転職サイトに求人を出していますが、その求人ページに数的データがなければ(もしくは少なければ)、ブラック企業率は飛躍的に高まります。数的データとは、業績・売上・残業時間・離職率・平均年収・ボーナス・休日日数・有給取得実績・育児休暇取得率など企業に関するデータのことです。これらのデータが数字として求人ページに載っていればいるほど、優良企業率は高まります。なぜかというと、この数字は良い数字でないと記載する意味がないからです。数字を出していない企業というのは、出せば逆効果だと考えているため出していないのです。例えば、月平均残業時間80時間とか、3年後離職率40%とか(苦笑)書こうものなら、「自社はブラックです」と公言しているようなものですからね。
数字がない=誇れるような数字ではない=待遇や環境があまり良くない
これは求人ページを見る時の鉄則ですからしっかり覚えておきましょう。
6. 求人を飾るキラキラワード
これは特徴5の亜種のようなものです。ブラック企業の多くは誇れるような数的データをあまり持ち合わせていないため、余白を埋めるためにキラキラワードを多用する傾向にあります。キラキラワードとは私が皮肉で用いている造語です。「耳触りは良く注意を引くものの、具体性に乏しい言葉」のことを指しています。
例えば、「希望・やりがい・夢・将来性・情熱・やる気」などが該当します。労働者にとっては、健全な財務基盤と力強いビジネスシステム、そして何より実績あっての「希望」であり、「やりがい」です。これらの言葉だけが上滑りしている企業には近づかないようにしましょう。甘い言葉巧みに応募を募るのはブラック企業の常とう手段だと心得ましょう。シビアに企業分析をするのです。
また、キラキラワード同じように「団結・サークル・イベント」も要注意です。社内のサークルやイベント活動(本業とは無関係の)を謳う求人ページを出す企業も地雷です。良く考えてみてください。高いお金を払って求人情報を載せてもらうのに本業そっちのけでサークル活動などを打ち出す企業がまともだと思いますか?そのスペース、一体いくらで買っているの?という話です。また、強すぎる団結を求める企業は馴染めなかった時のリスクが高く、加えて比較的ブラック率も高いことから、私はおすすめしません。
7. 性別や年齢のバランス
社員の性別や年齢構成に偏りがあれば、ブラック率は高まります。特に見るべきは女性の社員数と30代~40代のミドル層の社員数です。
まず、女性社員が極端に少ない場合、かなり危険信号です。これは、その職場が産休や育休を取れる制度を整えていないこと(もしくは雰囲気的に取れないこと)、子どもの迎え等で定時退社をするといった家事との両立が難しいことを意味します。そもそも本当にブラックの会社は、育児などで将来的に休業が必要と予想される社員をとらないこともあります。女性社員の数はその会社が社員のワークライフバランスをどれだけ尊重しているかの指標になります。
また、中堅層がいないのもかなりやばい状況です。これは、シンプルに離職率が高いことを意味します。その職場は何も知らない新卒か、もう転職先の残されていないシニア層しかいないのです。そして残っている20代の社員もほとんど転職を考えている……こういった会社は求人ページに若手活躍中!といった見出しで若手が楽しそうに働く様子の写真などを掲載しがちです笑。それしかアピールポイントがないのです。そして、写真に写るようなミドル層がいないのです。
8. 固定残業代制度or (裁量労働制度)
これは給与体系システムの話になります。固定残業制度とは、実際の残業時間にかかわらず、「毎月20時間3万円分の残業」をしたことにしよう(みなそう)、というシステムです。最初から3万円支給と決まっているので、これが仮に12時間しか残業しなくても3万円もらえるのです(一見ラッキー)。そして、逆に超過して残業した分についてはその時間分だけ3万円にプラスで支給されます。なんだ、ただのホワイトじゃん!と思ったかもしれませんが、世の中そんなに甘くないです。企業の中には、この固定残業制度を悪用して超過分を払い渋る奴らがいるのです。もちろん違法ですが、めんどくさいことになるのは必至です。僕が言いたいのは、あえてこの制度を採用している意味は何なんだろう?と考えてみてください、ということです。超絶ホワイトな企業ならば、給与計算の単純化や社員の生産性への意識付け、などといったまともな理由も出てくるでしょうが、多くの場合ブラックな理由からこの制度を導入する企業の方が多いのが現実なのです。
ちなみに、裁量労働制度は、もっと激しいです。残業代だけでなく基本給まで実労働時間とは無関係に固定なのです。極論、週に60時間働こうが週に6時間だけ働こうが一緒なのです。これはかなり成果主義に近づきますので一概にブラックとは言い切れないとも思いますが、やはりどんな目的で企業がこのシステムを導入しているのかを考える等、しっかりとした注意が必要です。
9.ホームページがださい
言わずもがな、今やHPは企業の顔です。HPにお金をかけられない、かけていない企業は市場競争における弱者と言わざるを得ません。避けた方が無難です。
以上がブラック企業の特徴になります。
第二節 ホワイト企業の特徴8選
続いてホワイト企業の特徴を見ていきます。
多くはブラック企業の特徴と真逆のものですので、イメージしやすいはずです。
説明の重複が多くなるので、簡単にいきましょう。
1.参入障壁が高い
インフラ業界、巨大工場や高度な製造ノウハウを必要とする業界、大学、研究所、などチャレンジャーが現れにくい業界はそれだけホワイトになりやすいです。それは、激しい価格競争にさらされることなく、高い利益率を維持できることを意味するからです。
2.盤石の収益基盤
時代の趨勢や景気に左右されない収益基盤もホワイト企業の特徴です。例えば、生活必需品メーカー、インフラ全般、などは、人が生活している限り収益が無くなることはありません。ブレない経済基盤があればこそのホワイト企業です。
3.待遇が良い
これは説明不要ですね。
4.低い離職率
厚生労働省のデータによると離職率の平均は15%、飲食は30%、インフラ系6%、となっています。3年後離職率ほど信用できるデータもありません。確実にチェックしましょう。
5.働いている人の構成バランスがよい
社員の年齢層が偏っていない、産後復帰の女性社員がちゃんと活躍している、こういう企業を探しましょう。
6.面接官の尊敬の態度
面接官や採用担当者など企業側の人とメールなり電話なり対面なりで接触する機会があると思いますが、その時の様子は要チェックです。特に対面での言葉遣いや態度をよく観察しましょう。彼らの言動や態度に、こちらに対する対等性や尊敬の念が見て取れればOKです。逆に、尊大な態度や高圧的な態度が見えればNGです。転職の基本は対等である、この原理さえ理解していない人物を窓口に据えている時点で、ホワイト企業ではないのです。
7.将来に備えている
人口減、超高齢者社会、IoT、AI、VR、AR、自動運転、コロナ、などは、確実にこれからの社会に大きな影響を与えるファクターです、それに対してのビジョンを打ち出すのはもはや、スタンダードです。未来像をしっかり発信している企業を選択しましょう。
「会社四季報」から、企業の投資CF(キャッシュフロー)を確認すれば、どれくらい設備投資にお金をかけているのか(つまり未来に投資しているのか)ということがわかります。未来へ投資せずに足元のお金周りだけ良く見せる企業は避けたいところです。
8.倍率が高い
当たり前ですが、ホワイト企業は人気です。転職サイトや口コミ、SNS、掲示板などあらゆるところにそういう情報は転がっていますから。ですから必然的に競争倍率は高いです。高い倍率は最も信頼できるホワイトバロメーターです。是非、これは忘れないでください。ホワイト企業に転職するには、必ず、その倍率をくぐる必要があるということです。
そしてまた、倍率が高いということは企業にとっては、そこまで頑張って募集広告にお金を払う必要がない、ということでもあります。ですから、転職サイトにそもそも掲載がなかったり、あっても非公開だったり、特定の転職サイトに特定の期間しか掲載がなかったりします。転職サイトにおけるレア度(見かける頻度の少なさや、求人へのアクセスのしにくさ)も立派なホワイト指標だといえます。
以上がブラック企業とホワイト企業の特徴です。
これらを参考に転職サイトや企業HPなどを見ながら企業研究を行い、応募する企業を精選していきましょう。
最終的な企業分析はまた別の方法で行いますので、まずはざっと目を通し、これらの条件を満たす企業を候補としてマークしておく、という程度で構いません。
この中から選べば、最低限ブラックではなく、経済基盤のしっかりしている企業だ、というリストを作るのです。
そして、転職の軸や自分の適性や経験からベストなものをチョイスし、今度はこちらが選ばれるためにもっと深い分析をしていく、という流れになります。
さて、それでは【第六章】転職エージェントを最大限活用する方法、へ行きましょう!