バリュー株投資まとめ
成長株投資と双璧をなす、投資手法、それがバリュー株投資。
投資の神様ウォーレン・バフェットが推奨していることでも有名です。
バリュー株、とは割安株、ともよばれます。
要するに、現在の株価が、企業本来の価値よりも割安で放置されている状況、それを見極めて安くイイモノを買いましょう!ということ。
それがバリュー株投資の考え方です。
安い株を見つけるだけならとても簡単です。PERを見るかチャートが底の株をみれば事足ります。
しかし、難しいのは、安くて価値ある企業を発見することです。
これはまさにお宝の発掘と似ています。
バリュー株投資において、このお宝を探す道具は、ファンダメンタルズ分析、もっとピンポイントに言うと、財務諸表です。
以下、3大財務諸表の損益計算書【P/L】、貸借対照表【B/S】、キャッシュフロー計算書を用いて、安くて価値ある企業の見つけ方を解説します。
「バフェットの財務諸表を読む力」を参考としています。
はじめに ~バリュー株発掘の原則~
【原則①】
価値ある企業とは、つまり、消費者の心の一部を所有している会社のこと。
具体的には、
- ユニーク(オンリーワン)な製品
- ユニーク(オンリーワン)なサービス
- 安定した需要がある製品やサービスを低コストで仕入れ、低コストで売れる企業
である。
【原則②】
- 会社の財務諸表で大切なのは、「一貫性」及び「永続性」
一貫して○○か?という視点が大切。
最大瞬間風速は雑音である。
良質なバリュー株を損益計算書から探る
まず、損益計算書におけるバリュー株発掘のヒントを示します。
※財務諸表の説明はしません。財務諸表の基礎知識がある読者を想定しています。
- 利益そのものの数字よりも「利益の源はなにか」を考えることが大事。(上記原則①)これに答えられないならその企業を買うべきでない。
- 粗利益率(粗利益[売上高−売上原価]÷売上高)が一貫して(10年以上)40%以上あれば、永続的競争優位性があると判断しても良い。
- 逆に粗利益率が20%以下はNG
- 粗利益に対する販売及び一般管理費の比率は、毎年大きくブレることなく30〜70%でおさまるべき。100%に近い数字が一度でもあると厳しい競争を強いられているということ。また、この比率が低くても研究開発費が膨れる傾向にある企業はNG。
- 多額の研究開発費を要する企業はそれだけで競争優位性に先天的な欠陥を抱えていると言える。(研究に資金をつぎ込んでも、技術開発競争に負ける可能性はいつだってある。)
- 粗利益に対する減価償却費率は10%程度が望ましい(参考:PGは8%、コカコーラは6%)
- 営業利益に対する負債の支払利息は15%以下がよい。ただし、これは業界によって大きな差がある。そこで、業界内でもっとも営業利益に対する負債の支払利息率が低い企業を選ぶ。
- 純利益がずっと右肩上がりであるか?(上がっては下がってのトレンドでかまわない、とにかく右肩上がりになるかどうか)
- 自社株買いが行われると、1株あたりの利益は高まる(株式の総発行数が減じるため)ので、純利益が減っていても、自社株買いのせいで1株あたり利益は高まる可能性がある。よって、全体の純利益もしっかり見ておくことが大切。
- 売上高に対する純利益が、一貫して20%以上で推移している企業は、永続的優位性を持っている可能性が極めて高い。10%台は広大なグレーゾーンで、一桁はやめたほうがいい。銀行と金融会社はこの数字の例外ビジネスである。かなり高いパーセンテージがでる。
- EPSが10年スパンで上昇トレンドを示していれば、金の卵の可能性がある。
良質なバリュー株を貸借対照表から探る
次に貸借対照表におけるバリュー株発掘のヒントを示します。
- 「現金・現金同等物」が大量にあり、借上げ金が少なく、しかもその現金が株式の発行や事業の売却でない(本業によるキャッシュ)なら、その企業は最高である。
- 株主資本利益率(純利益÷純資産)が高ければ、(最低20%が目安)よい。
- 銀行業を除き、負債比率(負債合計÷純資産)が0.8以下の企業を探す。ただし、自社株買いを行っている場合には、自己株式を純資産に入れ込んで計算する(自己株式調整済み負債比率)。ちなみに銀行業の平均は10ほどである。
- 過去10年に渡って長期借入がゼロもしくは少額の企業は、競争的優位性がある可能性が高い。具体的には、純利益3〜4年分の借入金であればよい。ただ、このような優良企業はレバレッジドバイアウト(買収する側がされる側の資産を担保に買収を行う。この場合被買収側は多額の負債を抱えることとなる)のターゲットにされる可能性があるので注意。
- 「変更の必要がない製品を一貫して生産し続けること」は、「一貫して収益を上げ続けること」に等しい。そしてそれは、ひっきりなしに生産設備を更新しなくて良い、ということでもある。具体的には、減価償却が終わらぬうちに、設備の更新を求められるようなビジネスは良いとは言えない。
- 総売上高に対する売掛金の比率が同業者に比べて低い企業は、競争優位性があるかもしれない。それはつまり、取引先に有利な支払い方を提示しなくてもやっていけている証拠。(120日の支払期限などを提示しなければやっていけない企業など弱すぎる)
- 資産の部の「のれん代」が増加していくということは、価値ある企業を買収していけているということで、評価に値する。
- 長期借入金の満期分(返済期限をむかえる年分)は、流動負債に計上される。原則、永続的競争優位性のある企業は、長期的な借入を行う必要がほとんどないので、このような流動負債の有無は注目に値する。一時的な問題解決(異業種の子会社の赤字を救うなど)のため、長期借入を行った永続的競争優位性のある企業の絶好の買い場は、この負債を返却する満期と同年であることがある。(流動負債が大きく見え、他の投資家が買い渋るため)
- 株価が暴落した企業を眺めて、キャッシュに富み、借上金が少ないなら、復活を見込んだの買いチャンスかもしれない。
- 金融機関の株を購入するとき、長期借入金より短期借入金のほうが額が多い企業を除外する。もっとも安全で堅実なのは、長期で借りて、長期で貸すスタイルだ。短期で借りて長期で貸すスタイルは不況に弱い。この視点で安定性を考えると、バンク・オブ・アメリカ<ウェルズ・ファーゴである。
- 優れた企業は優先株を発行しない傾向にある。
- 前払金、流動比率(流動資産÷流動負債)はあまり参考にならない。
【参考①】純利益には3つの使い道しかない
- 配当として株主に還元する
- 自社株を買う
- 内部留保としてビジネス発展等に使う
税引き後純利益から❶❷を引けば自然と、当該年の内部留保の額が出るが、企業の内部留保の増加率が、1.2位を争うほど重要な点である。
【参考②】自社株買いの4つの目的
- 株式を市場から買い戻す(純資産のマイナスとしてカウントされる)
- 総株式発行数が減るのでROE,PER,EPS等が改善する
- ストックオプションとして役員報酬や従業員報酬に使える
- 敵対的買収から身を護る
自社株買いの実績がある(純資産に自己株式がある)場合、潤沢なキャッシュフローを裏付ける証拠といえる。つまり、競争的優位性を持つ企業と判断できる。
良質なバリュー株をキャッシュフロー計算書から探る
【前提】
- 営業活動キャッシュフローは、純利益、減価償却費、なし崩し償却費(無形固定資産の償却)の和である。償却費は、当該年度、実際には現金の支出を伴っていない(購入時に一気に出ていっている)ので、加算する。
- 投資活動キャッシュフローは、資本的支出とその他投資キャッシュフローの和である。資本的支出は常に現金のマイナスをもたらす。
- 財務活動キャッシュフローは、債務の返還、配当金支払い、自社株や社債の発行等である。
【結論】
過去10年を見て、年間の資本的支出(投資活動に係るCF)が純利益の50%以下が良く、25%以下なら最高である。競争的優位性がある可能性が飛躍的に高まる。
以上です。バリュー株こんもり持ちたいですなぁ。
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「成長株投資まとめ」(オニールとミネルヴィニの投資法をまとめています)