転職活動完全ロードマップ【第二章】転職の軸

【第二章】 転職の軸

第一節 やりたいことがないと転職をしてはいけない?

第一章を読んで、転職への覚悟が決まったみなさんにいきなり水をさして申し訳ないのですが、ここで一つ質問です。

「みなさんは転職をしようとしているわけですが、次の会社でやりたいことは決まっていますか?」

例えば、こういう商品を開発したい、売りたい、プログラミングをしてみたい、子どもに勉強を教えたい、地域活性化に関わりたい…etc

もしかしたら、そういう確固たる思いがあるかもしれませんが、一方でそうでない人もいるはずです。ちなみに私もその一人でした。

ここで知っておいて欲しいことがあります。それは何かというと、あなたが転職しようとした時、世間は必ずあなたに「転職をして次に何をするのですか?」と聞いてくる、ということです。世間とは、あなたの妻であり、夫であり、親であり、友人であり、同僚であり、上司たちのことです。あなたが転職活動を始めると、この質問がいたるところから飛んできます。それもまるで集中砲火のように、です。その時、やりたいことは決まっていないけれど、転職をするということだけは決まっているという場合、答えに窮して困ってしまいます。もっと現実的に言うと、困るどころではなく、自分の転職の合理性に不安を感じて、ひいては転職そのものへの意欲がそがれてしまいます。やりたいことも決まっていないのに、転職をしようだなんて自分の方がバカだったのかもしれない……というような具合です。

ちょっとブルーにさせてしまい本当に申し訳ないです。ここで先ほどの問いに対する私なりの考えを示しておきます。

結論は、「転職に際して、やりたいことは別に決まっていなくても全く問題ない」です。

やりたいことベースで転職を進める必要なんてどこにもないのです。実は、やりたいことベースで転職を始めたり、内定を決めたりする人の方がはるかに少ないということを強調しておきたいと思います。むしろ、やりたいこと、から出発して転職をするのはレアなケースです。99%の人間にとって仕事をするうえで大切なのは、

何をして働くか、ではなく、どういう状態で働くか、なのです

大事なことなのでもう一度。

一般的な転職においては、何を成し遂げたいか、よりも、どう生きたいか、なのです。

この言葉は北野唯我さんの「転職の思考法」という本で紹介されているのですが、この言葉に私は本当に救われました。
やりたいことがなくても、今この状況、鬱屈した毎日を変えるためだけに転職をしてもいいんだ、という考え方に本当に勇気づけられました。
みなさんも是非、肩の力を抜いて安心して転職を開始しましょう。

第二節 転職の軸はなぜ必要か

ここから、本章のメインテーマに入っていきます。
本章のメインテーマ、それは「転職の軸」です。

転職の軸とは、簡潔に言うとあなたの転職の指針です。あなたの転職のゴール地点をいつも示してくれる地図のようなものです。転職活動の数カ月間あるいは1年以上、あなたはたくさんの情報を収集することになりますし、たくさんの考え方にも、価値観にも触れることになります。そのように長く誘惑の多い道のりを歩むのに地図は必須です。迷った時や躊躇してしまう時、何度でも自分が歩くべき道を指し示してくれるのが転職の軸なのです。

もう少し理解を深めるために例を挙げてみます。

例えば、転職中のAさんがいるとします。

Aさんは年収400万の事務職と年収600万の営業職どちらもの内定を獲得しているとします。
さて、Aさんはどちらを選ぶべきでしょうか?

おそらく勘の良いみなさんはお気づきだとは思いますが、この問いに正解はありません。
Aさんの転職の軸が分らない以上、答えようがないのです。

もしAさんの転職の軸が年収や経済的余裕などであれば、営業職が正解となるでしょう。しかし、精神的ストレスを最小化することがAさんの転職の軸であるのなら、ノルマや時間外勤務などがある営業ではなく、年収は低いけれど事務職が正解ということになります。さらに言えば、転職の軸が今後価値の急騰しそうな新しいスキルを身につけること、であれば上記のどちらも不適格でありAさんは転職活動を続けるかもしれないのです。

この例でみなさんにお伝えしたいのは、

転職の軸が定まらない限り、あなたの転職は成功も失敗も存在しない無意味なものになってしまうということです。

転職の軸を定めることは、転職のゴールを定めることであり、少し感情的な言葉を使えば、

今回の転職で何が何でも手に入れたいものを明確にすること、です。

そして、記念すべき転職活動の第一歩目は、この転職の軸を定めること、つまり転職における優先順位を考え、転職の最終ゴールを決定することなのです。

第三節 転職の軸の決め方

それでは転職の軸を決めていきましょう。この作業があなたの記念すべき転職活動の第一歩であり、今後の転職の指針になります。時間がかかってもよいのでしっかり考えてください。

具体的な手順を示します。

STEP 1

まずは、「どういう状態で働きたいか」、「どういう生活を手に入れたいか」の視点から、このたびの転職で何が何でも手に入れたいものを一つ決めましょう。サンプルは以下の通りです。

<サンプル>

・精神的余裕(自分の適性への合致やノルマなし、歩合制なしなど)
・金銭的余裕(年収やボーナス、手当など)
・時間的余裕(休日日数や残業時間など)
・市場価値(価値あるスキルや経験)
・安定的な雇用体系(解雇や減給の存在しない公務員やそれに準ずるものなど)
・やりがい(興味のある業務内容)
・社会的地位(会社の知名度やステータス)

上記のように、ある程度抽象的で幅を持たせたものが良いでしょう。例えば、「通勤時間の短さ」などでは具体的過ぎます。もし自分で考えつかなければそのままサンプルからの選択で良いです。これは以下のSTEPでも同様です。

STEP 2

次に、これは捨てる、というものを一つ決めましょう。捨てる、というと少し後ろ向きな気がするかもしれません。実際、ある心理学研究では、何かを捨てる、諦めるという決断は、何かを取る決断よりも2倍程度難しいことがわかりました。「捨てる」というのは本当に難しいことなのです。しかし、現実的に考えれば、あらゆる面においてプラスになる転職は非常に困難です。何かを捨てる決断をするのは、絶対に叶えたいものを叶える確率を上げるための大変重要な戦略だと理解をしてください。積極的に捨てる部分を最初から持っていたほうが最終的には満足のいく良い結果的になりやすいと言えるのです。
サンプルの中、あるいは自分で考えたもので積極的に捨てるものを決めましょう。

STEP 3

そして次は、できれば叶えたい望みを決めます。ドラフトみたいなものですね。2位指名です。最優先事項ではないけれど、できればほしいというものを決めておきましょう。

STEP 4

最後に、これは捨てることになっても構わないというものも、もう一つ決めておきます。

これで、「何が何でも獲得したいもの」、「できれば獲得したいもの」、「捨てるもの」、「捨ててもよいもの」、が決定しました。

簡素化するならSTEP 2まででもよいのですが、STEP4までするのは、内容を複雑化することで、自分自身の価値観や人生観をより深く考えることができるからです。最も重要なのは、当たり前ですが「何が何でも獲得したいもの」ですからそこは皆さんしかと心に留めておいてください。これが達成されれば転職は成功ということになります。そして、プラスαの「できれば獲得したいもの」までついてくれば、大成功です。

転職の軸を考えることは、自分にとっての仕事とは何なのか、働く意味は何か、人生におけるものごとの優先順位はどうか、などかなり本質的、核心的な事柄に思考をめぐらせることでもあります。

これには自己内省が求められるため、すぐに答えは出ないかもしれません。しかし、この思考を深めていくことで、さらにあなたの転職への決意は確固たるものになるはずです。この過程を経ることで、転職への希望や期待が高まり、転職活動をエネルギッシュにかつ粘り強く続けていけるようになるのです。本当に大切なプロセスですからくれぐれも焦らずじっくりと考えてみてください。

さて、次は【第三章】転職基本の“き”です!

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