作品
ラーメン屋

ラーメン屋         賑やかな店内で俺一人が笑っていないそれは濁ったみぞれのせいか 逆撫でる寒波のせいかそれともマフラーの毛玉のせいかこのままカウンターテーブルと同化してゆくような気がする突然その灰色は密着した肘の […]

続きを読む
作品
Run

Run 走る君は走る全てを勝ち取るために。 走る君は走る全てから逃げだすために。 走る君は走る大きなネジを捲くために。 走る君は走る今という一瞬を繋ぐために。 走る走る走る 今日も僕たちは走る自分であることを守るために。 […]

続きを読む
作品

鮫 僕たちはどうせ鮫なので誰かを傷つけずにはいられぬのです生まれたての赤子の弱さを嗅ぎつけて群れからはぐれた小魚を追いまわしてこの鋭い歯牙で貫かざるを得ないのですそこに滴る黒い血を悪だ、悪だ、と責めたててはいけませんそれ […]

続きを読む
作品

手 夕陽へ向かう電車の中、女の手を見ていた。 窓際に座る、若い女の手だった。 「今さっき月を砕いてきたの」と手は語った。 それほど、白く、強く、内側から光っていた。 トクトクと拍動(う)つ青い血管は、私の本能を刺戟した。 […]

続きを読む
作品
暴れ馬には腐った自由を

暴れ馬には腐った自由を そうかそうか苦しいか 泥を跳ね上げ 怒り嘶(いなな)き 心臓を吐き出すのは そうかそうか絶望か 荒野で一匹 ぽつねんと 狂うことにも疲れ果て 砂塵に吹かれて 脚を折るのは ならば、そこの暴れ馬 私 […]

続きを読む