転職活動完全ロードマップ【第八章】書類作成〜職務経歴書編〜

【第八章】書類作成〜職務経歴書編〜

では続いて、職務経歴書を作成していきます。

職務経歴書とは、これまで自分が経験してきた仕事の概要及び詳細、ポジションや成果等を示す書類です。

多くの場合それらの項目に加えて、自己PRや資格・スキルの明示欄もあります。職務経歴書と履歴書との決定的な違いは、記述する内容について自分なりの工夫を入れ込む余地が多い、という点です。また、ここでは減点方式の評価ではなく、加点方式の評価となります。

つまり、職務経歴書とは、あらゆる手を使いながら採用担当者に「面接に来てほしい」と思わせるための書類なのです。

あらかじめ覚悟してほしいのですが、職務経歴書の作成は履歴書の作成の比ではなく、手間ひまがかかります。じっくりやっていきましょう。

第一節 職務経歴書の基本の”き”

正直、この節の内容は全編を通してもベスト1,2を争うくらい重要でクリティカルなものではないかと思っています。ぜひ、押さえていただきたい内容です。

まず、職務経歴書の目的をハッキリさせておきましょう。
大事なことなので、強調しますよ。

職務経歴書の目的は、採用担当者(書類を読む人)に、「面接に来てほしい」「直接会ってみたい」と思わせることです!!

もう一度いいます。

職務経歴書の目的は、採用担当者(書類を読む人)に、「面接に来てほしい」「直接会ってみたい!」と思わせることです!!!!!!!!!!!!!!


何?いきなりおかしくなった!?と思われる人もいるでしょうから、もう一言付け加えます。職務経歴書は、あなたのすごさ、優秀さ、をアピールすることを第一目標とする書類ではないのです。

ここの勘違いをしている以上、書類選考、及び面接において(というか転職そのもののにおいて)、良い結果を得ることは難しいでしょう。

あなたの優秀さをアピールすることと、採用が決まることを、同列もしくは強い相関関係があるものとして勝手に捉えてはいけません。

このことを強く意識しましょう。職務経歴書は、採用担当者に「会いたい」と思わせさえすれば、それで大成功なのです。それができるなら、背伸びをすることもカッコつけることもないのです。

もう少し話を進めましょう。

そうであるならば、書類を書き始める前に絶対的に重要な作業がありますね?
おわかりですか?

そう、それは、「採用担当者(つまりその企業)がどんな人物を欲しがっているかを徹底的に調べること」です!

だいたい、中途採用というのは、採用の“枠”が決まっているものです。

こういうポジションが空いているから、こういう経験がある人材が欲しい、とか。
こういう分野に力を入れていきたいから、こういうスキルがある人材が欲しい、とか。
企業全体の新陳代謝を上げたいから若い人が欲しい、とか。
とにかく即戦力しかいらない、とか。
人件費を削りたいから、とにかく若い育成枠が欲しい、とか。

もちろんこれらが複合的に絡み合っているわけですが、実際のところ、労働力の確保というのは、企業側にとって最重要の課題であり、大きな支出ですから、「なんとなく決める」なんてことはありえません。明確なニーズと、労働力の強さ&支出、のバランスをしっかりもって、「じゃあこのレベルでこういう人を採ろうか」ってやっているわけです。この採用の“枠”を想定して、その枠の中に自分を入れ込み、ど真ん中ストライク人材として自分を売りこむ、これが転職の必勝定石です。

第二節 企業の採用“枠”を分析する

では、どうやって、何を手掛かりに企業が欲している人物像を浮き彫りにしていけばよいのでしょう。結論から言うと、あらゆる全ての情報がヒントになるのですが、中でも有効な情報ソースを整理しておきます。

  • 1.転職サイトに掲載されている採用募集ページ
  • 2.企業のホームページ

これをメインとし、必要に応じて口コミサイト等を利用するだけで十分です。

ここから先は一般論として解説することが困難なので、具体的にどのように企業の採用枠を想定していくのかを2つの例で示していきます。

【具体例① 中規模学習塾の場合】

これから示す例2つは、実際に僕が転職をして働いた会社となります(2つ目は今も働いている)。1つ目の例は中規模の学習塾です。


<採用ページ&ホームページから得られた情報>

  • 「あなたの経験を活かしてみませんか?」「教育現場経験者、大歓迎」など「経験」というワードが多く見られた。逆に未経験可という文言はない。
  • 実績次第で2~3年で教室長の可能性もある。
  • 年齢は不問
  • 当時、伝統的な学習塾事業から手を広げ、就職支援事業(大学生と企業のオンラインマッチング事業)、eスポーツ事業(プロゲーマーチームのマネジメント事業)への進出を狙っていた。
  • 社長からのメッセージに、既存の学習塾スタイルからの脱却、新しい伝統の創造、が謳われていた。


もちろんもっとたくさん情報はあるのですが、採用枠の想定に関して大ヒントになるものだけをわかりやすく抜粋してみました。

いかがですか?あなたならこの情報からどのような採用枠を想定しますか?
ちょっとクイズ的に考えてみてください。


<僕の答え>

僕は、あぁ、完全に即戦力パターンだな、と思いました。おそらく、幹部など会社の軸となる労働力が新規事業の方へ手を取られており、既存の学習塾を支える人材が不足しているのではないか、と想像しました。ほぼ間違いなく、新米や完全未経験の塾講師は採用する気がなく、最初からある程度一人で仕事を任せられる人が採用枠だと想定しました。しかも、社長メッセージや新規事業(特にeスポーツ事業)への進出から勘案して、最新のテクノロジーや世の中の流行に敏感で、自分の意見やアイデアを積極的に表明でき、変化を怖れず、ゴリゴリ仕事を進める「肉食系」が好まれるだろう、というところまで想定を深めました。

<結果>

職務経歴書では、教師経験(学級担任の経験や部活動顧問の経験)、英語授業力、を全面に打ち出し、即戦力感を強くアピールしました。さらに、ワードプレス(人気のブログツール)や専用ソフトでの写真・動画編集のスキルがあることも加えました。これで、即戦力&流行・IT系に強い、という、どストライク人物像を作り出しました。面接の時もそういう想定で受け答えをしました。

結果は無事採用でした。

【具体例② 国公立大学事務の場合】

現在僕は大学の事務職員として働いています。転職をしたのが2年前。採用想定人材の分析は今でもよく覚えています。

〈採用ページ&ホームページから得られた情報〉

  • 採用は毎年3名程度
  • 地域に根ざした大学づくりを目指している

以上!(笑)

いや、冗談抜きで、かなりノーヒントに近くて困ったんですよね。で、まぁこういう場合もあると思います。例えば、公務員系だったり、それに準じた団体だったり、いわゆる営利企業以外ですね。そういうところって独自の路線とか打ち出していなくて、とにかく“当たり障りのない”必要最小限の情報しか出していないんです。これらの採用募集ページというのは、「募集要項」となっており、非常に堅苦しく、なにも手がかりがありません。

そこで、こういう堅物相手(これが実はホワイト率高い)の対処法をお伝えします。


〈考え方と対策〉

基本的に、国公立大学事務や公務員等、営利企業でない(もしくはその色が薄い)ところは、他の営利企業とは毛色がまったく異なります。組織としての目標が違うから当たり前ですね。

営利企業は利潤を求めます。世の常として、利潤は常にフロンティアにあります。つまり、開拓、進化、効率化、そういうものを必然的に追い求めることになるわけですね。それに応じて必要な人材も、ざっくり前述の「肉食系」になるんですよ。ベンチャー企業なんかその筆頭というか、その特徴がものすごく強いわけです。

一方、利潤が第一ではない組織というのは、基本的に地域社会のインフラとして機能していることが多いです。役所、大学、消防署、ハローワーク、児童相談所、 etc. インフラっていうのは、「安定的に持続的にサービスを提供すること」が使命です。つまり、現状維持ですね。例えば、今月は役所閉めるけど、来月から利用者満足度10%向上させます、ってやっても意味ないし、それは困るんです。だってインフラなんだから。となると、必要となる人材も変わってきて、「安定志向」になります。こういう組織にとって一番困るのは、調和を乱す個人プレイ野郎です。ベンチャーなどなら「失敗してから考えよう!」みたいなことも許されるかもしれませんが、それってこういう組織でやるとNGなんですよ。皆困るから!!ここ、本当に大事なので強調しますね。利潤を求めない組織が欲しい人材って、優秀なガツガツ挑戦肉食系、ではなくて、ちょっとくらいトロくても調和と安定を重んじる草食系なんです。特に組織内での協調性が最重要スキルです!(ここ必修)
ちなみに、営利企業でも、例えば元国営企業(JA,JR)やインフラホワイト大企業(ガス、電気など)にはこれと同じ傾向があります。

つまり、フロンティアを目指して冒険し、お金を獲得する必要がある企業なのか、それとも現状を維持するだけで使命を果たせる組織なのか、で採用の“枠”、理想とする人材像は全く違うんです。

〈結果〉

僕は、完全に草食系を装いました。協調性を第一に置き、過去の仕事については、チームで得た成功体験や、組織研修のリーダーを務めた経験を前面に押し出しました。採用担当が「あ、この人は組織の一員として仕事をするということがどういうことかわかっているな、無茶なことはしそうにないな」と思うような職務経歴書及び面接の対応を心がけました。結果は、採用でした。おそらく倍率は40倍近くあったように記憶しています。やはり、“枠”の想定は、結果に直結するな、と確信しています。

第三節 まとめ 職務経歴書の書き方


では、これまでの話をもとに実際に職務経歴書を作成していきます。もう覚悟をしていることとは思いますが、念の為言っておくと、各企業へ効果的にアピールするためには、やはり各企業ごとに、それぞれ提出する職務経歴書を作成するべきです。履歴書はある程度使い回すことができますが、職務経歴書はそうはいきません。手間暇がかかります。

さて、第二節で説明したとおり、まずやるのは企業側がどのような採用“枠”で人材を募集しているかの調査です。平たい言葉で言えば、ニーズ分析ですね。

このニーズ分析さえ緻密に行うことができれば、作業は半分以上終わっています。後は、企業側の理想像に経歴や職能を含めたあなたの姿を重ねてゆくだけです。

あなたの職歴や経験、スキルのどの面を強調させるか、それらをどの角度から切り取るか、それを考え抜きましょう。

個人プレイが歓迎されるようなら、それにあった経験やエピソードを打ち出すし、協調が重視されるなら、チームとしての成功談やチームとして結果を出すコツやその考え方を打ち出せばよいのです。これは、面接においてもまったく一緒です。ニーズに沿った職務経歴書を書くことができれば、内容がすごいものでなくとも、通過できます。

相手が求めている労働力を提示する、それが全てです。

次でひとまず終わりとなります。

では最後に、お礼を込めて、【最終章】転職の力、です。

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